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事例8 min read2026-01-19

稟議・根回し文化にAIエージェントを導入した企業の事例:承認時間を75%短縮

日本企業特有の「稟議・根回し」プロセスは意思決定の遅さとして批判されがちだが、AIエージェントはこの文化を破壊するのではなく最適化できる。3社の実践事例を詳報する。

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AgenticWorkerz編集部
AI × Work Research

稟議・根回しは本当に「悪」なのか

「稟議(りんぎ)」と「根回し」は、グローバルビジネスの文脈でしばしば「日本企業の意思決定を遅くする元凶」として批判される。実際、海外のビジネスパートナーから「なぜ決裁に1ヶ月もかかるのか」と聞かれた経験がある日本人ビジネスパーソンは少なくないだろう。しかし正直に言うと、この批判は半分しか正しくない。

別の視点から見ると、稟議と根回しは組織内の合意形成と情報共有を同時進行で行う、精巧なプロセスでもある。稟議書が関係者を次々と回ることで、全員が決定内容を事前に把握し、実行フェーズでの抵抗や混乱が起きにくくなる。根回しは「根拠なき根まわし」ではなく、実行を成功させるための摩擦ゼロ設計だ。問題は「プロセスの存在」ではなく「プロセスの非効率」にある。そしてAIエージェントが変えるのは、まさにその「非効率」の部分だ。

稟議書の起案から最終承認まで平均23日かかっていたある大手製造業では、AIエージェント導入後に6日まで短縮された。プロセスを廃止したのではない。AIが各ステップの「準備と調整」を加速させたのだ。この75%削減という数字が、3社の事例とともに何を意味するかを見ていこう。

事例1:商社A社が根回し準備を30時間→8時間に圧縮

東京本社に約3000名を擁する総合商社A社では、大型案件の社内承認に平均4週間を要していた。書類作成より深刻だったのは「根回し」にかかる時間だ。案件担当者が部門長・関連部署の責任者・役員秘書に個別に説明して回る作業が、一案件あたり平均30時間を消費していた。財務部には収益の話、法務には契約リスクの話、経営企画には戦略の文脈——それぞれ違う切り口で説明資料を作り直す手間が積み重なっていた。

A社が導入した「根回し支援AIエージェント」はこの課題に直接切り込む。案件の概要・リスク・期待効果をシステムに入力すると、AIが関係者ごとにカスタマイズされたサマリーと想定Q&Aを自動生成する。財務部門向けには5年間の収益シミュレーション付き、法務部門向けにはリスクマトリクスと競合他社の判例付き、経営企画部門向けには中期計画との整合性分析付き——それぞれの関心軸に最適化された説明資料を「同時に」生成できる。この仕組みで根回し準備時間が30時間から8時間に圧縮され、承認期間も平均28日から7日へ75%削減された。担当者が語るのは「書く時間より考える時間が長くなった」という質の変化だ。

事例2:地方銀行B行が融資稟議書を6時間→30分で初稿生成

九州に本店を置く地方銀行B行では、中小企業向け融資案件の稟議書作成に一件あたり平均6時間を要していた。融資担当者が企業の財務データを信用調査会社から取り寄せ、業界動向を調べ、保証状況を確認し、それらを行内の複雑な稟議書フォーマットに落とし込む作業が大半を占めていた。月12件の案件を担当すれば、それだけで72時間——つまり9営業日分が稟議書作成に消える計算だ。

AIエージェントの導入により、担当者が企業名と融資希望額を入力するだけで、金融庁ガイドラインに準拠した稟議書の初稿が30分以内に生成されるようになった。財務データの取得・分析・リスク評価・業界比較まで自動化されている。重要なのは、最終的な融資判断は依然として人間の担当者と審査部が行う点だ。AIは「書く作業」を担い、人間は「判断する作業」に集中する。この分業により、一人の担当者が扱える案件数が月12件から19件に増加し、地域中小企業への金融サービス提供能力が58%向上した。

事例3:製薬会社C社が45日→11日へ、逐次処理を並列化

大手製薬会社C社の問題はもっと根深かった。新薬開発プロジェクトの予算変更申請に平均45日の承認期間を要していたのだが、その原因はプロセスの数ではなく「順番」だった。グローバル本社・国内事業部・研究開発部門・財務部門など8つの承認ステップを一つずつ順番に回す逐次処理が、時間の大半を浪費していた。1つのステップに5〜6日かかれば、8ステップで40〜48日になる単純な算数だ。

C社はAIエージェントを活用して、並列承認が可能なステップを識別し、依存関係のない複数の承認者へ同時に稟議書を送付する「並列審査ワークフロー」を構築した。法務と財務は独立して同時審査できる、研究開発の確認とグローバル財務の確認も並走できる——AIがこの依存グラフを自動生成し、最短経路の審査順序を設計する。結果、平均承認期間が45日から11日に短縮された。稟議文化を廃止せず、プロセス設計だけを根本から最適化した、現代的な日本型意思決定の完成形だと言えるだろう。

#稟議#根回し#承認フロー#意思決定効率化

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